雨女 評論
ホラーといえば、大別すると西洋と日本(もちろんアジア的なものもあるがよく知らないので割愛)とに区分することも出来るが、西洋のホラーは肉感的恐怖を喚起する場合が多いのだけれど、ジャパニーズホラーは恐怖の源泉が西洋のとは少し違うように思う。日本で永く語り継がれる怪談には恐怖の背景に悲しみの感情が作品を貫いているのだ。
今作は優れた日本のホラーを継承し、単なる恐怖では終わらせない”悲しさ”が作品全体を覆っている。内容は明かせないが、四谷怪談や子育て幽霊のように、恐怖の中にも人間の業による悲しさが深く刻まれている。
なので35分間のストーリーでもかなり練られて作られている。
難を言えば伝統的な日本の怪談を踏襲しているだけに、五感を刺激するホラーではあるのだけれど、それが思考と皮膚感覚に違和感が生じてしまうのだ。西洋のホラーは肉体的な痛みや臨場感を味わうのに適したジャンルではあるが、日本のホラーは臨場感よりも精神に感応するような恐怖なのだ。
それは評者が4DX初体験だったせいもあるとは思うが、映画慣れしている分、スクリーンに惹き込まれている時に、座席が揺れたり、水滴を顔に受けたりと未体験の経験に感覚が混乱するのである。これを映画として観るべきか、または新しいアトラクションと認知するのかで見る人の評価が違ってくるように思う。
評者が4DXに慣れていないので、五感を刺激する4DXを2時間近く体験したら疲労困憊すると思う。なので、この作品の上映時間35分は4DX入門者には丁度良いのではないだろうか。本来はより作品に没頭するための手段なのが4DXなのだが、評者が慣れていないせいで、むしろ疎ましく感じてしまった。
だが、上述したようにストーリーは洗練され日本の伝統的恐怖が横溢している。
公開は6月4日だが、梅雨どきに雨の話しを重ねてくるのがよく分からない。
ガーデンミストクーラーが気持ちよい夏場に持ってくるのが穏当ではないだろうか。個人的にはそう思う。
2016年6月4日(土曜日)公開
★★★