Movie Review-英国王のスピーチ 評論
第二次大戦中に即位した英国王ジョージ6世の実話で、彼は重度の吃音に悩んでいた。 彼には後に「王冠を賭けた恋」で知られる兄のヘンリー8世がいたが、謹厳な彼は兄に王位を継いでもらい自分はつましく生きたいと願う。だが、兄の退位に続き、ナチスの台頭とロシア共産党の運動に直面し、否応なく王室の「顔」に担ぎあげられることになる。 この物語は吃音に悩む主人公とその病を治す言語聴覚士との階級を超えた友情と信頼が話の主軸となっている。真面目だが癇癪持ちの王と対等の友情を求める平民出の言語聴覚士の階級差ゆえのギャップのある会話が笑いを生むのだが、言語聴覚士の歯に衣着せぬ物言いの中にうわべでは無い本当の真摯さに王は気付き次第に彼に信頼を置くようになる過程がユーモアたっぷりに描かれている。 第二次大戦という困難と吃音という病に階級を越えた二人の人間が立ち向かうことにこの映画の醍醐味があるのだ。 ところで、ジョージ6世が吃音だったことは、それは参考書で少しそのことについて触れられていたので、高校生の頃から知っていたのだけれど、参考書ではシンプソン夫人との恋を選んだヘンリー8世のことを好意的に書いていて、ジョージ6世については吃音であることが無能の証左であるような説明が丁寧にも書き加えられていた。 映画ではそれが対極に扱われているのだが、誰が主人公になるかによって意味までもが反転することに歴史認識の難しさを感じた。
★★★★
