ニートと高度化する仕事について

専門家の分析では急増するニートの理由は、インターネットの普及により自宅で暇つぶしが出来るようになったということだ。
私は、それは違うように思う。
ニートになる直接の原因は、仕事の専門化・高度化により仕事についていけなくなった人がドロップアウトしてニートになるのだと思う。 それは中学生や高校生が授業についていけず学校生活から脱落していくのと同じ現象が起きている。
高学歴の人がニートになりやすいのは、イメージしていた仕事像と現実の乖離が著しいため幻滅するのである。もうちょっと付け加えると、専門外の仕事が高度化してついていけない自分にプライドが傷つくのである。
経理では簿記の知識が必要で簿記のスキルは永く使えるような気がするのだが、ITの分野においては、次々と新しい技術を導入して、またそれの耐用年数が長いものである保証が無いということから、覚えても無駄になるかもしれない懸念が確信に変わり多くの人が職場から離脱して行く。
仕事についていけない恐怖心と疲れから心身に異常を来して引きこもりになるのではないだろうか。私はそのように感じる。
昭和の時代に植木等が演じた“無責任男”は会社でも幇間が重宝していた時代だった。"いいかげん"でもOKな余裕のある時代だった。だが、現代は違う。ノルマはきっちりと課せられて効率的に働くよう強制され、高度化・専門化する業務の中で高いパフォーマンスを維持していかなくてはならない。そうなれば、burn outして行く人は少なくないだろう。
ギリギリと締め上げれば音を上げる人だっている。
永遠に成長し続けなければならない資本主義社会の企業では、効率化を極限まで追求してそのマージンがほぼ無くなりつつある。
ニートを減らすには給料を下げるリスクを冒しても、時短勤務や在宅ワークを導入するかして、コミュニケーションの負荷を減らす必要がある。
今、様々な企業でコミュニケーション能力のある人材を求めているのはその裏返しなのだ。
必要とされるコミュニケーションスキルが異常に高くなっているので、要件に適う人材も狭められ企業間で争奪戦になっている。
もうちょっと必要とするコミュニケーションスキルのレベルを下げていかないと日本で働いていける労働者の母数は増えない。
日本でのワーキングスタイルをもっとゆるいものにしていかないとニートの増加を防ぐことは出来ないだろう。
但し、これは経済成長にも関わってくる問題だから政府もすんなりと応じるとは思わない。
ニートの削減は本質的には経済成長を犠牲にする意味でもあるからだ。

 

2016年9月11日

 

 

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