保護主義と既得権益
トランプ政権が誕生して3ヶ月が経とうとしているが、アメリカの保護主義政策がどこまでアメリカの経済を活性化させるのか分からないけれど、たとえ一時的に景気が上向くとしても長い目で見ればマイナスになると思う。保護貿易で上手くいった国を寡聞にして知らない。社会の基本原則に立ち返ると、互恵関係であって、それを拡大したものが世界経済だと思う。トランプはその互恵関係が歪で利益が一方的に債権国に集中していると批判している訳なのだけれど、そもそもの発端がアメリカ人は車にハンドルや座席を取り付けるような仕事で年収6万ドルくらいを要求しており、そうなれば安い賃金で働くメキシコ人を雇用するのは不思議ではない。これから多国籍企業は6万ドルの賃金でアメリカ人を雇うのかもしれないけれど、企業の利益の圧迫でアメリカに工場を持つメリットが無くなってくれば、おそらくは第三国へ生産拠点を移転するのだろう。
今、アメリカはアメリカのブランドネームで企業をアメリカに繋ぎ止めようとしているけれど、それが功を奏すのか疑問だ。
トランプ政権はアメリカの理念と真逆のことを行っていて、そうすれば、アメリカの世界の中心たる求心力を喪って行くと思う。
トータルで見ればアメリカは衰退していくと思う。
EU離脱を決めたイギリスも同様で、性質上国境の概念が希薄な企業がこれに従うようには思えない。結局多くの人が自分の取り分が減ってまでも他人の窮乏には関心が無いからかもしれない。つまるところグローバル化とは富の流出であり、その痛みは富める国の中間層が負担することになるからだ。アメリカ人もメキシコ人と同等の賃金で働けば雇用を得られるだろうという身もふたもない結論にはなるが、その国が持つ富の水位差で恩恵を受けようという考えは既得権益者のと同様の考えである。
結局、大衆は富裕層の既得権益を批判しながらも自らの既得権益については無自覚なのである。
2017年3月12日