労働の非対称性2

 

前回の続き:
カネだけが目的の企業は社員が定着しないのは前回記述した通りだが、これはつまり”成果報酬型”の企業にも当て嵌まる。報酬が100%金銭で還元される会社には従業員は定着しない。カネを稼ぐのが目的で働いているのならば、効率が良く実入りのいい仕事に鞍替えするからだ。帰属意識が無い分転職を決意する閾値は低い。
それを思いとどまらせるには、カネでは換金出来ないメリットを従業員に与えなくてはならない。好例としてスターバックスのCEOは従業員に充実した福利厚生とバリスタを経営に参加させて当事者意識を与えた。
スターバックスの社員はその末端まで自分が経営の舵を握っていることを自覚していたのである。
だからスターバックスは企業として堅い経営が出来るのである。
成果主義が諸刃の剣なのは、成果主義が労働の対価を100%払うかのような錯覚を与えてしまうことである。
また、全てがカネで解決するシンプルな思考になるために前述したようにカネで解決する会社はどこでも同じなので、労働者から見れば成果主義の会社は他の会社と見比べても違いが分からない。ただ、A社はB社よりも給料が高いという見方しか出来なくなる。
なので、成果主義を標榜する企業の社員の定着率は良くないだろうと推測することが出来る。
利害関係だけで結びつく集団は弱い。団結の結束力を強めるには、カネでは無い幻想が必要だ。言い換えれば理想であり、具体的に言うとミッションステートメントがある企業である。今の時代はカネだけで動く人間はそうも居ない。
皆、人生にカネでは無い理由を探している。
死なない程度のカネなら自分で稼げる。
社員に帰属心を植え付けるにはカネ+αが必要なのである。
スターバックスのCEO、ハワード・シュルツの自伝を読んでみて欲しい。
集団を束ねるのに必要なのは”理想”と“公共心”なのである。
そういや、黒澤明監督の『七人の侍』もそういうお話しだったな。

 

2017年3月30日

 

 

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