ゼネコンという病
ちょくちょく就労する企業へ派遣されるいわゆる請負元の企業で研修を受けたりすることがあるのだが、その豪華な内装に驚くことがよくある。
それで思うのは別に輪転機が回っているわけでもなく、只、ソファーが立派だったり調度品が豪華だったりオフィスが一等地にあったりするのだ。
日本の派遣会社の事業所数は世界の平均から群を抜いて多いのだそうだ。
つまりそれだけ旨味のある商売と云える。
資本主義では企業(資本家)が生産設備を提供し、それを労働者が運用して賃金を得るという仕組みだった。食品工場とか、今では無いが、Windows OSをCDに焼いてパッケージングして出荷する工場があるのはまだ健全な労使の関係だった。
それが現代になってモノを生産してカネを得る資本家と労働者の関係が成立しなくなったきた。ソフトウェアの世界では資本家が提供する生産手段は”パソコン”だけである。昔は汎用機という個人では購入できない金額の計算機を企業が保持していたが、今はエンジニアが個人用のパソコンを用意すればそれで設備投資を賄う。
エンジニアは自分の賃金を稼ぐのに資本家の助けは要らないのだ。
少なくとも現代の労使関係は以前の労使関係とは違う。
労使ではなく、生産者と販売元みたいな関係である。農家もほんらいであれば生産した農作物を直接スーパーに卸すなりするのが健全な関係である。それを農協とかの中間会社が一枚噛んで流通を複雑にした。エンジニアの世界では派遣会社が中間に立ち雇用の調整弁の役割を一見果たしているように見えるが、派遣労働者は雇用期間を終生保証されている訳ではなく、実際問題として雇用止めとかの不利益を被っている。
昔は派遣社員は通訳・プログラマーとかに法律で限定されていたのだけれど、それは技術を持っている自由労働者に近い職業であることを本質的に見抜いていたからそういう制度になった。今はそういう論理的な検証が出来なくなって業界の要請のまま派遣職種を無制限に拡げてしまった。その点で現代人は昔の人と比べて論理的思考が出来なくなっている。自分の欲望を正当化する理屈ならいくらでも思いつくみたいだが。日本が衰退している原因はつまるところ社会のゼネコン構造に巣くう中間業者(非生産者)の増加なのだけれど、経団連と癒着している自民党では社会を変える力が無い。外国人労働者を受け入れると自公が公言しているが、移民ではなく都合の良い使い捨ての労働者を欲しがっているみたいだし、そういう意図がある限り日本の浮上は無い。今までの自公政治はGDPが上向きの時だけ機能していた政権だった。
日本再浮上の施策として:
1.派遣業を廃止し、国家規模で行うAIを利用した職業マッチングシステムの開発
2.在宅ワークの促進。シングルマザーが家事の合間に働けるような職場環境の構築
派遣会社にはキャリアカウンセラーにジョブチェンジしてもらい労働者を身請けして派遣するような人身売買から手を引いて貰う。
それにしても日本の派遣制度は日本中世の売春宿で遊女を派遣する女衒とそっくりの仕組みだった。経団連や自民党議員の連中はこの派遣制度になんの含羞も無かったのだろうか。
2018年10月28日