資本主義の終わりと中間層の消失
2018/11/10 市川トーストマスターズクラブ
資本主義が終わろうとしています。資本主義とは資本家が設備を投資して、労働者がその設備を使用して利益を得るシステムでした。紡績産業でいえば、資本家は機織り機を導入してその労働者がそれを利用して生地を生産するのです。印刷でいえば輪転機を用意するのは資本家でした。語弊を恐れずに言うならば、第二次産業の資本家と労働者の関係は資本主義の健全なかたちでした。しかしながら昨今の世界経済において製造業の飽和状態が続き、大量生産・大量消費の生活スタイルが推奨されてなくなり、人はよりミニマムな生活を志向するようになりました。大量消費が先細りになり、社会は第二次産業から第三次産業へと移行したのです。その潮流の中で、日本の一部の知識人は起業・副業を推奨していますが、実際のところどうでしょうか?起業というのはビジネスを創造することであり、一般的に労働者として生きてきた人には容易に出来ることではありません。実のところそれは0から1を作り出すことであり、1を2や3に変えてきた今までの仕事とは違います。日本人に大きなパラダイムシフトを要求しているのが現代の日本なのです。
一部の知識人はこれからのビジネスで生き残るにはプラットフォームを作りなさい、という、ものでした。グーグルは検索エンジンというプラットフォームを作り、フェイスブックはSNSというプラットフォームを作りました。そして今もなおインターネット界ではトップランナーを走っています。表をご覧ください。1992年当時の資産価値トップの企業は2016年にはランク外になり、その代わりAmazonやアップルが上位になっています。現代においてIT企業はもっとも利益を出せる業種になったのです。
しかしながら、現代企業の競争は熾烈を極め、プラットフォームを作っても直ぐにライバルが現れ、模倣と際限の無いダンピングにより利益は縮小していくのです。限界費用0社会の出現です。今はエポックメイキングであっても直ぐに廃れていくのです。
日本でいえば、少し前であれば楽天は日本のIT産業の寵児でしたが、近年はその繁栄に陰りが見えてきています。Amazonの台頭もありますが、他のショッピングサイトが出店料無料の仕組みを作り際限の無い価格競争に突入したためです。限界費用0円の法則です。そこで、楽天もそうなのですが、多くの上位会社はその知名度とネームバリューを利用して優秀な人材を獲得し、つねに新しいサービスをリリースすることで市場を独占する方法を選びました。それにより人材の価値は非常に上がりました。現代は労働者の価値が二極化していて生産性の高い労働者には企業はいくら払ってでも引き留めようとしますが、資本に従属する労働者はよりいっそう厳しい条件で仕事をすることになります。この原因は世界規模での能力主義の浸透に伴う仕事量と報酬の関係が明確化されてきたことに起因します。つまり利益のあがらない仕事にはお金が回らなくなる仕組みがより精確になったと言えます。利益のある仕事にだけお金が行く。そのことから、世界規模での中間層の消失は労働者の生産性の二極化でもあると思うのです。
中間層の消失は成果主義を導入したことが原因であり、年功序列制の復活を求めるものではありませんが、富の一極集中を分配する仕組みを作ることが急務です。
例えば、ブルーカラー労働者の代わりにロボットを導入して人件費を減らした場合、ほんらい企業の利益になる浮いた人件費を税金として徴収し労働者に還元するべきだと思います。
ご静聴ありがとうございました。