ブラック・ファイル 野心の代償 評論

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【提供】カルチュア・パブリッシャーズ
【配給】松竹メディア事業部

 

意外性があるといわれた仕掛けは、意外は意外ではあったが、その意外性はそれほど意外ではなかった。過去にさんざん意表を突くようなどん返しのある映画を見せられているので、これくらいの仕掛けなら想定内だ。

只、野心に燃えた若手弁護士の希薄な倫理観や行動がそのまま作品の大きな伏線になっているのは上手いように思う。
主人公の妻の演技がぶっきらぼうで感情を失っているように見えるのも壮大な伏線だったのである。


伏線は最初から用意されているので、想定内のオチだったにせよ正統派のサスペンスであることには違いない。
映画は緻密に作られている。 だが、意外性に乏しい。


製作者の人間観がスクリーンに滲み出ているようで、そのアイロニーを含んだ視点は彼らがよく引用したシェイクスピアのように深い人間観察によるもののように思う。

主人公の上司であるエイブラムス(アル・パチーノ)が吐き捨てる「真実はさほど重要ではない。大事なのはどう見えるかだ」など透徹した人間観から奔出する台詞が重くて良い。

分かりきったシチュエーションは省略して前後のカットだけを見せる大胆な演出も簡素さの効用を知っている日系人監督ならではの方針か。

 

★★★

 

2017年1月7日(土)新宿ピカデリーほか全国公開

 

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