her 世界でひとつの彼女 評論
・映画ジャッジに掲載した批評の補足
映画ジャッジに掲載する批評はなるべく批判めいたいことは書かず映画の良いところをピックアップして書くように心がけています。それと、なるべく作品の本質を突くように少し抽象的な表現を使う場合があります。ここではオフィシャルな評論とは少し違いくだけて感想を述べています。
『her』なのですが確かに面白かったのですけれど、露骨な性描写は無いものの主人公とサマンサの睦言による交感シーンがあってちょっとエロチックでありました。試写会では女性の編集者も多く参加して試写室は満席御礼の状態でした。女性に受けているのは何故なのか首をかしげましたが、たぶんこういったイメージでの愛を交し合うシーンが受けたような気がしました。生々しさとは違うソフトで感情を重きにおいた愛情表現が女性は好きなんですね、と思いました。
他のサイトの批評を見ていると少し倒錯した愛情表現に嫌悪感を覚える方も居るようで、この作品を観る視点によって正逆反対の感想が出てしまう作品のようです。私個人としては良かったと思いますが。恋愛をすれば性の問題は避けられないことでスパイク・ジョーンズは逃げずにこの問題に向き合っています。だから評価してあげても良いんじゃないのかなと。
主人公は代筆ライターでクライアントに代わって彼らの配偶者や親族に心のこもった感動するような手紙を書くわけなのですが、第三者が当事者でもないのに客の関心を買うような文章を書くわけで、そこには主人公の複雑な心理が横たわっているように感じます。だからサマンサと出会った当初に実体は人間が作ったプログラムであるサマンサを心の底からは信じられなかった理由は主人公が言葉の虚構性に気が付いていたからだと思います。そういった観点で主人公を代筆ライターに設定したのは監督の慧眼であったように思いました。
うん、良かったです。今振り返ってみても。