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ベストキッド(リメイク)
1984年公開のオリジナルでは、虐めに遭う主人公が空手の達人ミヤギの指導の下、実力を付けて虐めを克服するというストーリーだったが、リメイクでは舞台は中国に移って主人公が習う武術も空手からカンフーに変更されている。 これは日本のプレゼンスが影を潜めて今や超大国アメリカの関心は中国に向いていることを意味している。 現代の世界情勢を反映して舞台が中国になっているものの、ストーリーの骨子は何作も続編を作られた作品なだけあって、虐めの克服、幼き淡い恋、主要な脇役の心的背景が旨く描かれている。とりわけジャッキー・チェン演じるハン老師に差す孤独の影は彼の奇行に依って明らかになるのだけれど、その奇妙さに比例して悲しみが深いことも窺えるだが、このエピソードが有る為にハン老師の過酷なまでに己にストイックである理由付けが出来て映画に一層の深みを与えている。 師範のミヤギ役に代わりカンフーの老師にはジャッキー・チェン演じるハン老師に変更されているが、カンフーの極意を孫子の兵法に起源を求めているところは如何にも中国らしいのだが、空手の極意もまた同様で、武術は保持しつつも使わないのが理想であるとの考え方は映画の中でよく主張される良心であり、言い訳でも有る。 映画の中では主人公が訓練に耐え、試合では順当に勝ち残り虐めっ子を打ち負かすのだが、現実は、時に正義は捻じ伏せられ、淡い恋は淡きままに想い出となっていずれ記憶から消し去られる運命にある。 映画だからこそこのように首尾よくハッピーエンドが迎えられるのだろうが、現実には無い幸運な話しを描くことで、それを観た人の心を照らす灯火になって欲しいと願わずにはおられない。
★★★★