ペット  評論

 

 

古株の飼い犬マックスと新入りのデュークの関係性がトイ・ストーリーのバズとウッディの関係と同じでそのロールモデルにとらわれて、そのフレームから脱却することが出来なかった。だが見方を変えれば、大ヒットした作品を研究しそのノウハウを取り入れることで盤石の安心できる物語になっているとも言えよう。
また、野良犬を捕獲しようとするアニマル・コントロール(保健所)の存在に怯える動物たちの現実や、打ち捨てられたペットが人間社会に反乱を企てるサブストーリーも含まれていて、人間とペットとの確執と共存も丁寧に描かれ啓蒙的な内容になっているのに好感が持てた。マックスと飼い主のケイティとの友情などは大人が見ても涙腺が緩むだろう。
マックスとデュークがソーセージ工場に迷い込んで、たらふくソーセージを食べるシーンがあるのだが、ただ単に彼らがソーセージを食べ散らかすという描写ではなく、擬人化したソーセージ達がマックスらとコラボするシーンになっているのは、絵的な面白さを追求した結果で子供が飽きないように配慮されていると思うのだが、そのダンスシーンがかなりぶっ飛んでいて、大人が見てもかなりサイケデリックさが漂うお楽しみのシーンである。
人間への反乱を企てる“スノーボール”という名前の白うさぎは小柄で可愛らしい外見に反して復讐心で我を忘れた危険人物(ウサギ)である。人類への怒りで元ぺット達を率いて破壊活動を行うのだが、この復讐の狂気に取り憑かれたスノーボールの存在が甘ったるいお子様向けだけの作品で終わらせないスパイスの効いたストーリーになっている。
マックスとデュークの珍道中を微笑ましく見ていても、その背後にあるぺットたちの厳しい現実と打ち捨てられたぺットたちの悲しみと怒りを代弁するスノーボールの存在が、物語をきりりと引き締めている。そのあたりは玩具の悲哀を描いたトイ・ストーリーでも描き尽くされたテーマなのだが、両者に共通するメッセージは他者の痛みにもっと意識的になるべきだろうということだ。
この作品のテーマは飼い主が家を空けるとき、ぺットは何をしているのかという動物を飼った経験のある人であれば、一度は想像したであろう疑問なのだが、この問いを発することが出来る人はきっとこの作品を観て溜飲を下げると思う。飼い主の夢とも妄想ともつかない想いを映像化してくれたのが本作なのだから。

映画を観た後は家路を急ぎ帰れば我が仔を抱きしめたくなる。そんな作品です。


★★★★

 

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