BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント  評論

 

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BFGとソフィーが巨人の国にある高い丘で文字通り「夢」を捕まえるシーンは幻想的で詩情に溢れている。そこでBFGが語る草木の囁きや虫たちのおしゃべりの様子をソフィーに言って聴かすシーンは生命ある全ての存在への畏敬と親しみが窺えBFGの深い知性と優しさを知る場面でもある。

 

巨人と人間の子供を共演させる映像技術は相当凝ったものなのだろうけれど、そこはあまり主張することなく、作品の世界へ没入するために黒子に徹している。

 

時はイギリスの現代ということになるのだろうけれど、敢えて時代を反映するようなガジェットは登場しないので原作の世界観を尊重しているように思う。

 

阿藤快に似た巨人が人類を「人間マメ」と呼んでおり、字幕ではそう翻訳されているがこれはhuman beingをhuman beansと言っているのかもしれない。その他hippopotamus(カバ)を言い間違えているのだけれど、語感の奇妙さを味わえるのは英語圏の人くらいであって日本人には原語の意味が解らないと翻訳の妙味が味わえない。そこは洋画を観る外国人にはちょっと不利な点である。ただ、字幕翻訳をされている松浦美奈さんのウィットの利いた翻訳があるのでそれを楽しんで頂きたい。

養護施設で孤独な日々をおくるソフィーの心の声を聞いて彼女の元に現れる、この優しき巨人は孤独な魂に寄り添う”誰か”が居ることを暗示している。
それがどんな形を取って現れるのかは分からないが、BFGは孤独な人の心に寄り添うソウルメイトの象徴なのだと思う。

BFGは原作者のロアルド・ダールの単なる想像の産物なのかもしれない。
だが、世界中の子供たちがこのおとぎ話を読んで 、BFGの存在を夢想したと思う。
人々が寝静まった夜に夢を届けるBFGは他者に福音を贈る聖者であり、不眠症のソフィーは世間の幸福からは隔離された孤独の象徴である。そんなソフィーを祝福するBFGは“あなたは独りでは無い”という強力なメッセージであり、作者は人類を言祝いでいるのだ。

 

映像的に愉快なお化けキュウリから醸造したとされる、泡が上から下へと向かうシャンパンのような飲み物”プップクプー”など作品世界を盛り上げる夢のある小道具が多い。

 

今作品の製作陣は監督:スティーブン・スピルバーグ、撮影監督:ヤヌス・カミンスキー、音楽:ジョン・ウィリアムズ等錚々たるメンバーで構成されている。辞書的な情報は掲載しない方針なので、詳細をお知りになられたい方は他サイトをご参照ください。

 

月並みな言い方にはなるが、「BFG」は夢と優しさに溢れる作品である。

 

★★★★★

 

2016年9月17日(土) ロードショー

 

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