風立ちぬ 評論

哀しくてうつくしいお話でした。
主人公の二郎といいその他の登場人物は裕福な暮らしをしているのだけれど、そのことが庶民である私に隔たりを感じさせられる訳ではなく、彼らの教養が痛烈な格差を思い知らされました。イタリア語を話すドイツ語も流暢に話す。トーマス・マンやヴァレリーの原文での引用が手の届かない人達の話しである気持ちを強くさせられましたね。後、これでもかと出てくる喫煙の描写。最初は肺病を病んでいる菜穂子へのアイロニーかと思っていたのですが、実はそうでもなさそうで、蔓延する結核に対して超然と喫煙習慣を止めない当時の人達の死生観や価値観を現代人が理解するための装置として機能していたようです。
後、ネタバレですが、ラストの3人の会話の時制が合っておらず、鈴木プロデューサーが話していたもうひとつのラストの存在を示唆するものでした。
総括すればとても良い映画で宮崎監督の有終の美を飾るに相応しい作品でした。

 

★★★★★

 

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