Sing/シング 評論

配給:東宝東和

(C)Universal Studios.

 

倒産寸前の劇場の支配人バスター・ムーン(マシュー・マコノヒー)やそのほかの動物たちは自分の人生を自らの決断で選びとっている。どの動物たちも歌うことで己の道を切り開こうとしている。
この映画のメッセージは“他人に何を言われようとも臆せず挑戦し続けろ。我々は他人の人生を生きるのではない。自らの人生を生きる主体となるのだ。“
この作品にはそんな前向きなメッセージに溢れている。
バスター・ムーンは“大”が付くほどの楽天家だし、強欲なネズミのマイク(セス・マクファーレン)も自分の才能を信じ切ってまだ貰っていない賞金を担保に銀行から借金するなどあがり症のミーナ(トリー・ケリー)を除けば誰もがポジティブだ。
ミーナには隠された才能があってそれが未だ表には出こないのだが、ミーナは自分の行く道を決めかねている“普通の人”のメタファーである。
彼らは歌を歌っている時、自分の人生の主人公になっている。自分の人生を完全にコントールしているのだ。

“人生の応援”がテーマなので劇中でかかる曲のどれもがポジティブなエールに満ちている。予選を勝ち抜いた6人の候補者が歌う演目を挙げると、


1・Shake it Off リース・ウィザースプーン/ニック・クロール
2・I’m Still Standing タロン・エガートン
3・Set it All Free スカーレット・ヨハンソン
4・May Way セス・マクファーレン
5・Don’t You Worry ‘Bout a Thing トリー・ケリー

 

これらの曲はフルで演奏されるので後半の野外コンサートを待とう。

セス・マクファーレンが歌う「マイウェイ」が選曲されているのは映画のテーマに忠実に沿っているからだ。製作者も言及しているが、この作品はあらゆる人たちへのanthem(応援歌)なので選曲の全てがポジティブで元気が出る内容になっている。
この作品ではテイラー・スウィフトの『Shake it Off』が曲目に入っているが、Illumination entertainmentが前回手がけた『ペット』でも冒頭のシーンで彼女の『Welcome to New York 』が流れている。この会社はどうもテイラー・スウィフトのポリシーと波長が合うようだ。
ストーリーは結構ベタな展開なので、子供向きではあると思うのだが、歌はどれも英語なのが難しいところだ。ただ、筆者の先入観ではあるが、英語で歌うミュージカルは感情移入しやすい。人生の喜びや楽しさを長音階の英語の歌で聴くと心が晴れ晴れしてくる。言語というのは情報伝達の手段だけでなく、その国の文化も運ぶから多言語をよく知って多角的な視点を身に付けるのが良いように思う。その点で『Sing/シング』はアメリカ文化の真髄を伝える作品でもある。ベタでも王道であるのが『Sing/シング』なのだ。

 

★★★★★

 

2017年3月17日(金)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー

 

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