ダンガル きっと、つよくなる 評論

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン/ギャガ

©Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016


13億の人口を抱える発展著しいインドであるが、その一方でカーストという身分制度が残る矛盾した国でもある。そんな根強い因習が残る村社会で自分の娘を未だ認知されていない女子レスリング選手に育てあげるのは並大抵の苦労では無かったと思う。
この物語では慣習やしきたりよりも強い親子の絆を描いている。
彼らはレスリングで勝利するよりも先に世間の冷ややかな偏見にも勝利しているのである。
過去にも勇気ある女性が男だけの世界に果敢に挑み”ガラスの天井”を破ろうと奮闘してきた。
最近ではヒラリー・クリントンが女性の地位向上の期待も含めて大統領選に立候補していたが、”女性”というのは”母性”という属性を持つ一方でそれが足枷にもなっていた。そんな偏見を払拭するように現在に至るまでさまざまな女性活動家/学者がそのガラスの天井に立ち向かっていった。アメリア・エアハート、イザベラ・バード、マリー・キュリー等々。ちょっと全部を思いつくことが出来なかったのでウィキペディアを調べてみたら実に様々な分野でたくさんの女性の第一人者が居ることが分かった。我々の世界は常にそういったパイオニア達の貢献によって偏見だらけの世界が変わっていくのである。
この作品でも二人の娘を育て上げた父親のマハヴィル(アーミル・カーン)は娘を立派な人間に育てたいという赤心からついには女性の地位向上にも貢献したのである。
この作品の製作にはウォルトディズニーが関わっているが、親子の愛情は世間の因習よりも強いという思想を強く反映している。しきたりや慣習が根強く残っているインドにおいてこういう作品が作られるのは時代の要請だったのかもしれない。
作品ではマハヴィルの長女ギータを中心にレスリングで頂点に辿り着くまでの過程が活き活きと描写されている。作品の中でちりばめられる台詞も利いていて「人は戦う前にその恐怖と戦う」とマハヴィルが娘を評価するシーンや、また或る場所でマハヴィルがインド国歌を聴くシーンは涙を禁じ得ないなど、なかなか肌が粟立つほど鼓舞されるシーンが多い。
この作品を観て思うのは女性の地位向上というだけの映画ではない。
大事なのは”人生は勝ち負けではない。どう生きたか”である。
彼らは勝ち負けを理由にその人生を選んだのではない。彼らを衝き動かしていたのは信念だったのだ。現代は価値観のパラダイムが起きて人も社会も不安定な世の中になった。そんな世界で信念に生きるこの親子の活躍に快哉を叫びたい気持ちになった。

 

★★★★★

 

4月6日(金) TOHOシネマズシャンテ他全国公開

 

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